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ECの心理的セグメンテーションとは?実践的な活用方法について解説
ECの心理的セグメンテーションとは?実践的な活用方法について解説

ECの心理的セグメンテーションとは?実践的な活用方法について解説

はじめに

顧客セグメンテーションの手法の1つに「心理的セグメンテーション」があります。

嗜好、ライフスタイル、態度、価値観、購入目的などの心理的要因に焦点を当てて顧客をセグメンテーションすることで、EC企業はターゲットに絞った効果的なマーケティング施策を実施することが可能になります。

この記事はLTV向上に取り組むECマーケティング担当者の方にむけて、心理的セグメンテーションの概要と活用方法について解説します。

ECにおける顧客セグメンテーションとは

ECにおける顧客セグメンテーションとは、顧客を特徴や行動に基づいてカテゴリー分けすることです。顧客セグメンテーションの主なタイプには、属性セグメント(年齢や性別)、心理的セグメント、地理的セグメント(居住国・居住地)、行動セグメント(購買履歴やサイトでの行動など)があります。

EC事業者は、顧客セグメンテーションにより顧客のタイプ別のニーズや購買目的、購買傾向を理解することができ、顧客解像度を高めて効果的なマーケティング施策を実施することができるようになります。

顧客セグメンテーションの全体像はこちらの記事で解説しています:

心理的セグメンテーションとは

心理的セグメンテーションの概要と背景

心理的セグメンテーションは、嗜好、ライフスタイル、態度、価値観、購入目的などの心理的要因に焦点を当てて顧客をセグメンテーションする手法です。

現代におけるこの手法の位置づけを正しく理解するために、少し歴史的背景について触れておきます。

心理的セグメンテーションは、客観的な地理・人口統計データだけでは限界に達していた1980年頃に提案されました。消費習慣の多様化により、同じ地域に住む同じ性別・年代の消費者というだけでは、ニーズをうまく絞り込むことができなくなったためです。この方法は、社会心理学やフロイト精神分析のフレームワークなどを取り入れつつ、独自のアプローチを展開して進化してきました。

誤解を恐れずに言うと、これらは、あまり消費者の詳細なデータを取得できなかった時代に「理論にあてはめて心理的状態を推測しましょう」という文脈で提唱されていたものです。1980年代と比べて、現代においてはIT技術とデータ解析の進歩のおかげで、消費者の心理を推測するに充分な質・量の行動データを入手することが可能になりました。

心理的セグメンテーションと言うからには、何かしらの心理状態を表すデータを新たに収集しなければいけない、と身構えてしまうかもしれませんが、必ずしも難しく考える必要はありません。むしろ、手元にあるさまざまなデータ(人口動態、地理的、行動データなど)を組み合わせたセグメントに対して、"心理的な意味付けをすること"が、今日における心理的セグメンテーションの実態と言えます。

ある顧客の商品購買履歴を見たときに、この人はこんな目的で購入をしているだろう、こんな嗜好を持っているだろう、というふうに推測することは、マーケターにとってはある意味当たり前のような考え方なのではないでしょうか。その考え方にあえて名前がついているもの、と理解するのが、最もしっくりくるのではないかと思います。

心理的セグメンテーションを作成するステップ

たとえば以下ようなステップで、人口動態、地理的、行動データを組み合わせて心理的セグメントを作成することができます。

既存の顧客データを分析する

人口動態セグメンテーションや、地理的セグメンテーション、行動セグメンテーションを組み合わせて、似たような購買傾向を示すパターンやトレンドを探します。

ここで活用される行動データは、たとえば購買商品の傾向であったり、購買サイクル、商品を購入する曜日や時間帯などまで該当するかもしれません。

関連記事:

共通の心理的特性を特定する

セグメントに属する顧客の間で共有されている心理的特性を推測します。これには、価値観、嗜好、ライフスタイル、態度などが含まれます。「N1分析」を活用すると、より深い洞察を得ることができるかもしれません。

N1分析は、複数の大手企業でマーケターとして活躍された西口一希氏によって提唱されている手法です。N1分析とは、「ある一人の顧客を徹底的に分析すること」です。分析したい顧客セグメントを代表するような顧客に対して、対面でのインタビューを行うことで、購買にかかわる行動や心理の特徴を洗い出します。

N1分析に関して詳しくはこちらの書籍をご参考ください:

『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』 西口一希

顧客ペルソナを作成する

データをもとに推測した内容や、N1分析の結果を踏まえて、心理的セグメントを代表する「顧客ペルソナ」を作成するとより理解が深まるかもしれません。

ペルソナとは、人口動態データ、地理的データに加え、嗜好、行動、心理的特性などの情報を集めた架空の人物像を作成する手法のことです。

マーケターが各セグメントの典型的な顧客像をイメージしやすくなり、具体的なニーズや動機を視覚的に理解しやすくなります。

コスメ用品ECにおけるペルソナの設定例

顧客の「価値観」を特定するには?

嗜好やライフスタイルといった要素は、行動データや地理的データをうまく組み合わせて活用することで推測ができます。では、「価値観」はどのように特定すればよいでしょうか?

まず、そもそも現在どのような価値観を持つ消費者が多いのか、というトレンドについては、たとえば広告代理店など消費者に対して深いインサイトを提供している専門家の意見を参考にするのが有益です。

参考サイト:ウェブ電通報

そのうえで、目の前の顧客セグメントがどのような価値観を持っているかを推測する方法についてご紹介します。

ひとつの考え方は、先ほどN1分析を活用してボトムアップで推測する方法です。顧客セグメントを代表する一人の顧客に対して、その人の生活や考え方、人生観などまでを深くインタビューすることで、購買活動の根底にある価値観を洗い出すことができます。

ただし、顧客インタビューには手間がかかります。もしすでに価値観に関する一定の仮説があるのであれば、マーケテイング施策の結果を利用して仮説検証サイクルをまわすことができます。具体的には、顧客セグメントが持っていると思われる価値観に基づいた商品プロモーションを行い、それに対するサイト訪問や購買などのデータを分析するという方法です。

たとえば、環境意識やサステナビリティに対する価値観を持った顧客を想定したとします。サステイナブルな商品や取り組みをアピールするメールマーケティングやサイト上の特設コンテンツマーケテイングを実施し、他のセグメントと比べて反応に差があるかどうかを確認することで一定の仮説検証をおこなうことができます。

ECでの心理的セグメンテーションの活用方法

心理的セグメントをECのマーケティングで活用するいくつかの方法を紹介します。

関連商品のおすすめ

心理的セグメンテーションを利用して、顧客の嗜好や価値観に合ったパーソナライズされた商品のおすすめを行うことができます。関心の高い商品やコンテンツに絞っておすすめを行うことにより、個々のプロモーションの効果が高まるだけでなく、顧客にブランドに対する信頼や愛着を感じてもらえる可能性が高まります。

メールのセグメント配信

顧客の心理的セグメントに基づいてメールマーケティングをカスタマイズします。最終的にプロモーションする商品やクーポンが同じであったとしても、顧客の心理的側面を意識した文面を心がけるだけでも効果的です。自分に関係がある内容だ、自分にとって重要だと思ってもらえる可能性が高くなるので、より高い開封率やクリック率、コンバージョン率が期待できます。

新しい商品や売り方の開発

心理的セグメンテーションを利用することで、顧客の真のニーズが浮かびあがり、市場のギャップや顧客の満たされていない需要を特定することができます。特定の顧客セグメントに対応する新しい商品や売り方の開発に活用することができるかもしれません。

たとえば、たくさんある商品の中から選ぶことにストレスを感じ、便利さや時短を重視する心理的特徴を持った顧客セグメントに対しては、定期購入サービスやキュレーションされた商品セットを提案することが有益かもしれません。

まとめ

心理的セグメンテーションは、ECのマーケティングにおいてとても重要な要素です。とはいえ、必ずしも「心理的側面をあらわすデータを新たに取得しないといけない」というわけではありません。人口動態、地理的データに加えて、行動履歴などの客観的なデータ群に対して、心理的な意味付けをおこなうことが心理的セグメンテーションの基本的な考え方である、と理解するのが分かりやすいです。

杓子定規な人口動態データや地理データだけでは見えてこない、嗜好、ライフスタイル、性格、価値観といった心理的要素を推測して考慮することで、EC企業はターゲットに絞った効果的なマーケティング施策を実施することが可能です。

顧客セグメントの心理的特徴を明らかにする際には、N1分析やペルソナの設定などの手法を活用するとより深い洞察を得ることができます。

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Author
ECPower プロダクトマネージャー

この記事は顧客セグメント管理・ジャーニーインサイト"ECPower"のプロダクトマネージャーが執筆・監修しました。記事の内容はShopifyをはじめとしたEC事業者向けのLTVグロースやCRM支援、データ分析の知見や実績に基づきます。

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